2008年11月3日月曜日

君の名を呼ぶとき

ロミオにならなければジュリエットには会えない。
ルミネの脇をすりぬけて今日もラムタラに向かう。
リミットはもうすぐそこまで迫ってきているのに
ラミネートの向こうに君のまぼろしを探している。

読み返すたびに今も血の気が失せてしまうけれど
弓をつがえた勇者のかたちの星座のころの只中に
闇と光が溶けあって無に帰すのならそれでもいい。

揉みしだかれる優しげな乳房の白い色を忘れない。
耳もとに触れられて染まりゆく頬の色を忘れない。
真水のように柔順にすべてを赦す心根を忘れない。

踏みにじられた花びらが季節を越えて蘇るのなら
秘密も嘘もすべて抱きかかえたままでかまわない。

はみだしたからには群れに戻る気はないのだろう。
飲みこんだ言葉はおそらく数限りなくあるだろう。
寝乱れた姿のまま懊悩する夜もあったことだろう。
涙が乾くまでさまよっていてくれてもかまわない。

富も名誉もそんなものなど一切なくてかまわない。
罪深いとも後ろめたいとも思うつもりは全くない。
血みどろの荒野に耳をすまして立ちつくしてみる。
民の嘆きのはたと止む一瞬がいつの日にか訪れる。

蝉しぐれの中で伏し目がちだった睫毛をひらいて
澄みきった青空にむかって小さな胸で深呼吸して
染みついてしまったものは一度すべて洗い流して

五月雨の街中ですれちがったとしても気づかない。
混みあう電車の中で隣に立っていてもわからない。

汲みつくせないほどの幸福に浸ってくれていれば
君がいつか誰かの優しい妻になり母となるのなら
神様なんて信じていなかったけれど信じてもいい。

御身大切に、こればかりは字余りでも言っておく。

笑みくずれたときの目尻も唇も何もかもが好きだ。
海のようにすべてを受け入れる君のことが好きだ。
意味もなく行く宛も知らず今はただ君の名を呼ぶ、