時間堂@王子小劇場、4/29(日)夜の部を観る。雨森さん3月『ハコ』でのお婆ちゃんもよかったけど今回の旅館(ホテル?)のおかみさん(年齢としては30台前半あたりの設定なんだろうけど山奥で暮らしてるせいか言動がおばちゃんっぽい)役もおもしろかった。歌(なんと今回はザ・ピーナッツ。曲名は知らない)がまたうまいんだよなー。
冒頭の男女2人の会話が、ああここは旅館でこのひとはおかみさんで、もうひとりは宿に泊まってる作家をてくてく歩いて訪ねてきた担当者なんだな、というのを言わずしてわからせる作りになっていて、ちょっと文芸作品みたいで出来すぎのような気もしたけど好感がもてた。
演出と役者陣の多くは去年観たリュカ.『vocalise』と重なる。編集者のひとは前回も同じような役だったような? 前回シャキシャキのキャリアウーマン役だったひとは一転してスランプで鬱気味の新鋭作家の役。なんか竹久夢二ふうだったな。
前半は泊まり客の女の子たちを中心にした幽霊騒ぎのドタバタ。このうちの一人が小説家志望で、尊敬する作家がたまたま同じ宿に泊まっていると知るや半ばストーカーのようになって弟子入りを志願する。この執着ぶりの動機として「大ファンだから」「作家になりたいから」だけしか用意されてないので、ちょっと説得力に欠けるというか空回りしてしまってる感じがした。
むしろ作家は世間からは「失踪した」「死んだらしい」と思われてる、宿で出くわしても本人なのか幽霊なのか終盤までわからない、ファンの子も連れの友達(小説とかには全然興味がない)からは「やめときなよ、きっと幽霊だよ」と言われるんだけど「それでも弟子になりたい」と突進していく。そんな作りのほうがわかりやすかったんじゃないかな。
まあ、それはそれで、じゃあ幽霊じゃないことはどうやってわかるんだ、という問題が出てくるか……。
すったもんだの末に作家が恋人と別れて一人になって泣くシーンでは、なぜか漱石の『それから』の最後が思い浮かんだ。何を失ったかという点ではこの女流作家と『それから』の主人公ではまるで逆なんだろうけど。なんでだろ。
おかみさんのセリフ「2人目ができちゃったのよ」で雨森さんは『vocalise』でも妊娠中の役だったのを思い出して可笑しかった。
p.s. 時間堂といえば『月輝きながら太陽の照る』を観てからもう2年。高山植物園はまだ再開しないのかな?