青年団国際演劇交流プロジェクト2007日仏合同公演@シアタートラム、4/8(日)夜の部を観る。夜って言っても17時開演だったけど。
日本で結婚して長年暮らしていたフランス人女性が乳癌か何かで亡くなり、母国から両親や弟が通夜に訪れる。葬式の話なのに笑いどころ満載で楽しかった。
ただ途中、妻を亡くした夫の「外国人で女性で仕事を持っていて(語学教師だった)というパターンはあまり例がないので相場がわからない」というようなセリフがあった。この相場というのは葬儀の費用だったか葬儀屋への謝礼だったか、それとも生命保険の額だったか、ちょっと記憶が定かではないのだが。
そのしばらく前に「自閉症の息子を交通事故で亡くした両親が『逸失利益ゼロ円』と算定され訴訟を起こしている(検索してみたところはてのままというサイトに詳しい)」というニュースを見かけていて、このセリフは妙に印象に残ってしまった。作者本人にはそんな意図はないのだろうが、平田オリザの作品というのは期せずして現実社会のいろんな事象とリンクするようなところがある。
この夫は妻の両親からも「悲しんでいる様子もなく、いやに落ち着いている」と蔭で不審がられるくらいで一見そこそこ有能な大企業の中間管理職という感じなのだが、ふと部屋から有島武郎の本を持ち出してきて読んで聞かせるあたりからすると文学部の助教授とか現国の先生だったのかなという気もする。
それで有島の『小さき者へ』(だと思う)を朗読するのだが「厳しい」とか「最後は他の女と心中しちゃうからダメ」みたいな意見が交わされて身も蓋もない。『小さき者へ』の畳みかけるような文体やリズム感はオレは好きなんだけど、たしかに「子供にこんなこと言ってわかるわけない」というのはそうかもしれない。
舞台は旧家の広い座敷で、芝居が始まる前には中央に通夜の名残りのビールの空き瓶などが散らばった卓袱台、隅のほうにはオレンジ色のアヒルのおもちゃなどが置いてある。
アヒルは単なるおちゃらけのオブジェだと思っていたのだが、あれは死んだマリーの忘れ形見の三歳になる娘(すでに別の部屋で寝ていて芝居には出てこない)がふだん乗って遊んでるおもちゃだったのかと終演後かなりたってから気づいた。それとも葬儀に駆けつけたフランス人の両親が孫に買ってきたおみやげなのだろうか、でも包み紙が見当たらなかったからそれは違うかな、とも思う。