2007年9月24日月曜日

フーダニット『汽笛が殺意を誘うとき』

タワーホール船堀・小ホール、8/25(土)18:00の回。若竹七海の戯曲第3弾。今回はおみくじがなかったな。ま、それはいいとして。

過去2作はコメディ色が強かったが今回は昭和恐慌期の憂愁感ただよう豪華客船が舞台。そして常連客たちの回想から立ち現われる、社交界華やかなりし頃の事件の記憶……。出演者も多くて中には頭を抱えたくなるような役者さんもなくはなかったが、老紳士を演じた川崎君の成長が著しくて頼もしい。

詐欺師夫婦が最初っから胡散くさかったのは、芝居全体からすればレッドへリング的な位置づけだったからだろうか。大富豪のワガママ娘は適役だとは思うんだけど、あともうちょっとだけ弾けてたほうが終盤の付添人の告白のサプライズが効いてたはず。パーサー役のひとがいい味出してた。矢崎滋みたいな感じ。

終盤の老紳士と少女の対話は重い。人が人を裁きうるのか。このあたりは人殺しのある話ではしばしば扱われるテーマだろうけど。この作品ではそこからさらに「小さなもの、弱いもの、はかないものを慈しむのは、結局のところ自己憐憫の延長でしかないのではないか」というところまで突き進んでいたような気がする。これはグサグサと刺さってきて痛かった。

まさか若竹作品でこんな展開があろうとは思いもよらなかった。すっかり寡作というイメージが(オレの中では)定着してしまった若竹さんだが、もしかして今後はセイヤーズのような道をとるのだろうかとも考えてしまう。

少女役の子は『死がいちばんの贈り物』『殺人現場へもう一度』(タイトルまちがえて憶えてた)のときは中学生だったというから今は高校生だろうか。衣裳が地味というか最初なんだかヘンなような気がしてたのだが、対話シーンで登場人物としての位置づけがわかってくるとナルホドと思える選択だった。