そんなわけで行ってきた。渋谷公会堂は何年か前のプリテンダーズ以来。
39番はスピーカーの真ん前だったがピアノのときに御尊顔が遠距離ながらほぼ正面から拝めて却ってよかったかも。
御尊顔って。
たぶん帰ってきたら「やっぱり期待はずれだった」と書くか、または何も書かずにスルーすることになるだろうと思ってたのよ。出かける前までは。
ところが。
いや~、見事に吹っ切れててびっくりした。デビュー20周年だったのね。30代のころはそれ以前の自分の作品を聴いて自己嫌悪に陥ることがあったけど40を越えたら逆にむちゃくちゃ肯定的になることができた、みたいなことを語ってた。若手(30代)のバンドメンバーに「若いよねぇ」みたいなことを言いつつ「でも30代に戻りたいとは思わない(笑)」と断言。
ニューアルバムの曲は今回初めて聴いたわけだけど「まだ30代の女」以外は全部演ったんじゃないかな。これも思ったより好印象。特にタイトルチューンなんか、刹那的で現世肯定的で毒はあってもちょっとした隠し味程度に抑えてあって色にたとえればバラ色ピンク色という、今いちばん聴きたいと思ってたタイプの曲だったんで嬉しくなったよ。
新譜以外からの曲は
- 夏はどこへ行った
- 優しい雨
- 風の扉
- 光の駅
- 風に折れない花
- 水の冠
- わたしの望み
- 忘却
- ラジオのように
- 月とSNAPSHOTS
- TRUE ROMANCE
- Happiness
- あたらしい愛の詩
- エンジェル
だったかな。(歳なので順番と網羅性には自信なし)
「風の扉」「あたらしい愛の詩」はいずれも小倉博和のアコギで6/8のリズム。「30代のころは昔の自分の曲を聴くと落ちこんじゃって」と言ってたのは「風の扉」のときだったかな。「風の扉」は前半で小倉、後半で鈴木がハモニカ。この曲は歌詞といいアレンジといい妙な力みがあって俺はやや苦手だったのだが今回の演奏は実によかった。
「忘却」では「この曲ができたとき『これで言いたいことは言い尽くした。もう曲を作ることはないだろう』と思ったけど、実際はそんなことにはならなくて、生きて感情が揺れ動くかぎり新しい歌が生まれてくる」というような意味のことを言ってた。それを聞いて直接ではなく他の曲を聴いてるときだったと思うんだけど、ふと「うたをうむおんな」という称号というか惹句というか、そんなものが思い浮かんだ。
鈴木のドラムスは「月とSNAPSHOTS」の後半で披露。
本編衣裳は真っ赤なロングドレス。しきりに胸のあたりをずりあげてたのがちょっと気になる。ちゃんと肩紐があるのを着ればいいのにと思った。でも今回のマイナス点はそこだけ。最後のほうで真ん中あたりがかなり深いスリットになってるらしいのに気づいたが、ドラムスのときどんなだったかは気づかなかった(笑)
親爺モード申し訳ない。
衣裳替えは本編途中だったかアンコールのときだったか忘れたがクリッシー・ハインドばりに黒のスーツ。そのあとニューアルバムに合わせて作られたというTシャツ。ちなみに物販コーナーでは今回も『創作ノオト(下)』は見当たらず。
でね。
俺はもう歳だしスタンディングなんか絶対しないぞ、するもんかと思ってたのよ。でもアンコールの『Happiness』の間奏で例によって長々とトークが入って、そのあと突如としてジャニス・ジョプリンが憑依した瞬間、もう思わず立ち上がってたね。あれには参った。燃えたよ。
そして3回目のアンコールがピアノ一本で「エンジェル」ときたもんだ。この曲それほど好きじゃなかったはずなのに至極すんなり受け入れられた。
なんだろうね、あの吹っ切れかたは。禁煙したのかな。こんなに安心して心穏やかに鈴木祥子のライヴが聴けるようになろうとは思わなかった。またしばらくライヴには行かなくなる予定だけど、あの調子なら当分のあいだは心配なさそう。